星屑記

何気ないことを考えたり、語ったり。

宝塚歌劇『春の雪』と明日海りお

実は私は、宝塚歌劇が大好きだ

ハマったのはここ数年でなのだが、友人に誘われて観たDVDですっかり虜になった。

なかでも大好きなのは、現花組トップスター・明日海(あすみ)りお

みりお(愛称)が以前、月組に所属していた時の公演『春の雪』のDVDを見た。

『春の雪』 [DVD]

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 (三島由紀夫豊饒の海』の第一作だが、未読のため原作と脚本がどれくらい違うのかはわからない)

演じたのは、主人公・松枝清顕(まつがえきよあき)。

侯爵家の嫡男で、とても誇り高く、同時に傲慢な青年だ。

「みりおのハマり役」とも言われた清顕。

なぜハマり役と言われるのか、感想と布教を交えつつお話ししようと思う。

なぜ歌って踊るのか?

そもそも、なぜ宝塚は歌劇――すなわち、歌って踊るのだろうか?

私の考えとしては、「夢の世界に浸るため」だと思う。

美しい女性が男役と娘役にわかれ、激しい恋や悲しく秘めやかな恋、あるいは渦巻く陰謀などを表現することは、一種のファンタジーである。

様々な形で表現される愛に、キャラクターへの想像をかきたてられこそすれ、タカラジェンヌ(役者)への想像は及びもしない。

明るく華やかで、美しい夢の世界。

公演の最後には、どんなに悲しい物語の後でも、賑やかな歌とダンスが披露される。

これも夢の世界を最後まで保ち、お客さんに楽しい気分で帰ってもらうためだ。

なぜ心情を歌うのか?

では、夢の世界を作るために、どこでもなんでも歌って踊るのだろうか?

もちろん、否である。

開演早々、ジェンヌ全員で踊ることが多いのだが、それを除けば多くはキャラクターの心情を表現する場面で歌い、踊っている。

なぜ心情を歌うかといえば、観客に印象付け、夢の世界をより盛り立てるためである。

キャラクターの心情に共感させることで、物語の起伏をより感じやすくなる。

『春の雪』では、清顕は二歳年上の綾倉聡子(あやくらさとこ)に思いを寄せている。

しかし高い矜持が彼女への思いを明らかにすることをためらわせ、傲慢な態度や冷たい態度を取らせてしまう。

清顕が聡子への恋心を歌うと、観客は思いの大きさを知ることができる。

それでいて実際の清顕は、聡子になど興味がない風に振る舞っていて、思いが空回りし、すれ違っている切なさを感じさせる。

つまり、キャラクターを掘り下げ、物語に深みを与えるために心情が歌われるのである。

なぜ「ハマり役」なのか?

では、なぜ清顕はみりおのハマり役と言われるのか?

それは、清顕の心情を歌うのがみりおだからである。

みりおは、とりわけ歌が上手いジェンヌだ。

落ち着いて聞きやすい高さ、伸びやかな広がり、こめられた感情。

私はみりおの歌が大好きだからファンだと言っても過言ではない。

もちろん他に好きな点もあるが、特筆すべきは「歌」である。

矜持の高さゆえ、なかなか素直に心情を吐露できない清顕。

その秘めた思いを表現する時、若々しくも気持ちの溢れる歌声は「これでもか」と言わんばかりに、思いを突き付けてくる。

みりおは、プライドが高いキャラクターを演じることが非常に得意なのだ。

現在上演中の『金色(こんじき)の砂漠』花組に組替えした時の『エリザベート』でも類似するキャラクターを演じていた。

つまり、キャラクターの心情を歌によって最大限表現できるがゆえに、清顕が「ハマり役」だったと言われるのである。

まとめ

「宝塚の名前は聞いたことあるけど、よくわからない」

そういう人が多いのではないかと思う。

女性だけってどうなの? 舞台だから高いんじゃないの?

そんな疑問もあるだろう。

女性ならではの繊細な表現や、艶っぽさもある。

チケットも、他の舞台に比べればかなり手が届きやすい。

戦国BASARA』や『ルパン三世』、一番最近では『るろうに剣心』などアニメ・ゲームを原作とする公演も行っており、親しみ深い。

劇場も、宝塚だけではなく東京にもある。

……いかがだろう? 意外と行けるじゃん、と思わないだろうか?

一度でいいから、ね、ちょっと、宝塚観に行こう。

 

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